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■インドネシア最大の屋台コミュニティ

 インドネシアの社会問題の解決にチャレンジするスタートアップを日本インドネシア協会の方がたにご紹介したくスタートした本連載。第6回は、ローカル屋台にテクノロジーをと頑張るWAHYOO (ワヒュー)を紹介したい。

  インドネシアの屋台はWarungワルン(Warung)やワルテック(Warteq)、カキリマ(kaki lima)などさまざまな形態があり、インドネシアの街のあちこちに見られる。3億人に近づくインドネシア人達の胃袋を、毎日さまざまな食べ物で満たしている。今回のスタートアップ起業家は、ピーター·シェアラー(Peter Shearer)。屋台の向上に臨んだ男性だ。

  1件の屋台には毎日50人から多い店だと200人のお客が訪れる。その客にリーチしたいメーカーと屋台をつなぐ、それがWahyooが目をつけたところだった。Wahyooの設立は、2017年8月8日。それからわずか3年半の現在、会員屋台はまだジャカルタと近郊都市のみであるが、すでに1万6,000店舗に上る。インドネシア初で、最大の屋台コミュニティとなった。

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商材・食材の仕入れから経営指導までトータルでサポート

 ピーターの若き日の夢は、40歳までに世界的なビジネス誌『Forbes』に載ることだった。彼には大学に行くチャンスはなかった。高校を卒業し、親戚のコネで1年半オーストラリアのレストランで働き、帰国してジャカルタで実家の洋品店の仕事を数か月手伝ったのがキャリアのスタートだった。

  実家の手伝いはすぐに止め、自身のビジネスを始める。初めは、学校に行き学んだ拡張現実のテクノロジー系のビジネスだった。自身の名声や成功を考えていたが、9年の月日を経て、次第にインドネシアの社会にインパクトを与えられるビジネスをしたい、と思うようになる。ただただ、自然にそう思うようになったそうだ。そして、自身の興味のある「食」と社会へのインパクトを組み合わせたWahyooを立ち上げた。

 設立にはスタートアップのイベントで出会ったダニエル(Daniel Cahyadi,現COO)とマイケル (Michael Dihardja,現CTO)が加わった。朝も夜も働き続けた。そして31歳の時に夢がかなう。Wahyooの会員が50店に達した時だった。『Forbes』の「将来期待される若き起業家」に選ばれた。

  ピーターが屋台に注目したのには、2つの理由がある。1つは若くて貧しい頃、食事は屋台でしかできなかったこと。そしてもう1つは、ケータリングのビジネスをしてい

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た母親が、毎朝3~4時に起きて市場に行

き、準備をするという生活を繰り返していたことだった。屋台でよりよい食事が提供されるように、そして小規模経営者らのビジネスや生活が改善されるようにしていきたいと思った。

 現在、Wahyooを通して、Redoxon(ビタミン剤)、Teh Pucuk(紅茶)、Betadine(消毒剤)、Le Minerale(ミネラウォーター)、Tora Bika(コーヒー)、 Happy Tos(スナック菓子)といった大手消費財メー

 カーの商品を会員屋台が販売することができる。Wahyooは消費財メーカーの広告がそれぞれの屋台で正しく掲示されているかを管理する一方、屋台にはそれらの商品の販売により収入を増加させ、ポイントを貯めればイスラム教徒の最大の夢であるメッカに行くチャンスを与え、正しい屋台経営や健康によい食品の選び方、調理法のデモなどの教育も行う。

   とにかく屋台のオーナー達が商品をきちんと購入できるようにアプリは可能な限り簡単にし、ニーズを把握しながら新たな機能をアプリに加えていった。忙しい屋台のオーナー達に携帯アプリを使わせるのが一番難しい、という。だが、一度使い始めると彼らはデジタルの効果を謳歌する。Wahyooは、GrabやShoppeeなど配送アプリなどとも提携している。市場に行くことなく食材をアプリで購入でき、顧客の呼び込みもアプリで可能になる。

 Wahyooは、自分達でアヤムゴレン(とりの唐揚げ)などの屋台も開発した。屋台のオーナーらが追加収入を得られるように、だ。Wahyooは情報、知識、テクノロジーで屋台が収入を増やせるように改善を続ける。

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成功とは「どれだけ人びとの生活を変えられるか」

 立ち上げから3年半のスピーディーな業務拡大に、ピーターらの精力的に働く姿が見てとれる。

 なぜ、これほど頑張れるのか。屋台はインドネシア全国に350万店ある、と言われる。多くのインドネシア人が日常に食事をする屋台。屋台こそがインドネシアの人々の生活をよりよくできる役割を持つんだ、とピーターは言う。屋台がもっと清潔で健康なものになれば、インドネシア人の生活はよくなっていくだろう、と。「成功はいくら稼ぐかではない。どれだけ人びとの生活を変えられるかだ」。この気持ちが彼を突き動かしている。

 私がこの若き起業家を応援する理由は、インドネシアの伝統的な屋台をデジタル化し、屋台のビジネスをプロフェッショナルなものにしたいという彼の情熱。また、決して高い教育を受けたわけではないのに、シンプルな技術で人びとの生活を変えられると証明して見せたことだ。彼の尽きないチャレンジをこれからも応援したい。    Wahyooウェブサイト : https://wahyoo.com/profile-id/

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