■GDPの6割を支える中小企業のファイナンスを支援

 インドネシアの社会問題の解決にチャレンジするスタートアップを日本インドネシア協会の方がたにご紹介したくスタートした本連載。第4回は、ソーシャルレンディングやピア·トゥ·ピアレンディング(peer-to-peerlending)と言われるネット上の融資仲介サービスを提供するスタートアップ、Gandeng Tanganをご紹介したい。

  インドネシアには6千万以上のマイクロ、および中小企業(MEMEs)がある。それらの企業はインドネシア労働者全体の97%の働き場所であり、GDPの60%以上を支えているという。それゆえ、政府もこれら企業に融資システムの構築をしている。

 しかし、詳細を見てみるとその便宜に授かっているのはわずか20%の企業にすぎない。80%は政府の準備する銀行ローンや融資へのアクセスをいまだ持たず、ファイナンスの正しい知識をもたず、銀行の利子よりはるかに高い、時には金利50%といった高利貸しを利用しているのが実情だ。マイクロ企業の多くが銀行口座も持たず、担保や2年以上事業をしていると証明できる法的文書など銀行ローンの基準を満たすことができないからだ。

 こういった状況が創設者の1人、ジェジー·セティアワン(Jezzie Setiawan)の気持ちを「どうにかしなくては」と大きく揺り動かした。97%の労働者、GDPの60%以上を支える中小企業が正しく平等に融資を受けることができるようになれば、経済は間違いなく伸び、貧困はなくなると考えた。ファイナンシャル·インクルージョンを増やし、貧困を減らす。これが課題だった。

gandeng tangan

■「ゴトン・ヨロン」の精神で資金調達を助け合うシステム

ジェジーは、インドネシアの有名国立大学、バンドン工科大学でビジネスマネジメント学士、イギリスのエクセター大学でファイナンス·アナリシス、ファンドマネジメントの修士号を取得。その後、銀行で与信·財務分析、証券会社で株式アナリスト、またパラマディア大学で講師を務めるなど金融業界で活躍していたが、Gandeng Tanganの設立時は若干27歳の若さだった。

 ジェジーらは、この社会問題の解決にインドネシアの文化「ゴトン·ロヨン(相互扶助)」を持ち込んだ。ピア·トゥ·ピア·レンディングの手法で互いに短期で資金調達を助け合うプラットフォームで、多くの人が安心して低金利で資金を調達できるシステムを作り、そして2015年Gandeng Tanganを設立した。Gandeng Tanganは「手を取り合って」という意味だ。

 Gandeng Tanganを設立する前、ジェジーはアメリカのあるNGOに興味をもっていた。社会起業家達が資金調達できる組織だ。誰もが貸し手として参加でき、借り手の返金が済むと資金が戻ってくるシステムが魅力的だった。

  しかし一方で、ジェジーは社会企業家達はドネーションに頼ることなく、自立して継続的に経営をすることが大切だと思っていた。彼女たちは、Gandeng Tanganにパートナーとして参加するマイクロ企業および中小企業にも、ただ融資の道を与えるだけでなく、さまざまな研修を開催するなど彼らのビジネス自身を手伝っている。

  設立から5年、2020年9月末現在までにGandeng Tanganを利用した中小企業は3500社。融資額は1社平均5百万ルピア(約3万5千円)で、合計融資額は140億ルピア(約1億円)にのぼる。貸し手の登録は1万8千人。1人の投資は5万ルピア(約350円)からだ。

  資金調達には地方の銀行の協力も得た。またマイクロ企業をさらにサポートするために、Gandeng Kiosという現金ではなく商品で融資するインベントリー融資のシステムも作っている。毎年100万人のマイクロビジネスをサポートする、それが彼女たちのコミットメントだ。

gandeng tangan

■マイクロ企業家を助けたいとの思いに共感

 ジェジーは、「100万人の起業家たちへの運転資本へのチャンネルになる」というビジョンを掲げ、煩雑な対応が必要であるにも関わらず1取引に5%のフィーしか取らないというビジネスモデルにこだわった。それゆえに投資を受けることに苦労もしていた。

 1日2ドル以下の収入しかないインドネシアの95%のマイクロ企業家を助けたい、それだけが彼女がGandeng Tanganを設立した理由だ。そしてその彼女の熱い思いこそ、私がジェジーを応援したい理由だ。

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