Krakakoa

■コンサルタントからの転身

 インドネシアの社会問題の解決にチャレンジするスタートアップを日本インドネシア協会の方がたにご紹介したくスタートした本連載。今回はKRAKAKOA(クラカコア)をご紹介したい。

 すでに、ジャカルタのスーパーマーケットや空港で素敵なバティック柄のパッケージに包まれたインドネシア産のチョコレートを手にした方も多いかもしれない。KRAKAKOAの商品だ。

 創設者のサブリナ・ムストポは、子供の時よりシンガポールで教育受け、大学はアメリカのコーネル大学で国際農業と地域開発、および第二専攻ではフードサイエンスを学んだ。大学卒業後は、アメリカの名高いコンサルティング企業·マッキンゼー&カンパニーで6年マネジメントコンサルタントを務めた。

 皆が憧れるキャリアにありながら、サブリナは満足していなかった。顧客にパワーポイントでアドバイスするだけでなく、自分で汗をかいて社会にインパクトのあることをしなければいけないという思いがあった。そして次第に、世界を変えるにはNGOでなくソーシャルビジネスだと思うようになった。

 アメリカで働きながら、母国のインドネシアにはもっとビジネス向上のニーズとチャンスがあると思った。そこで目をつけたのがカカオだった。インドネシアは世界に誇るカカオ豆の大生産国でありながら、多くのインドネシアのカカオ豆農家はカカオの生産を続けるための十分な収入がなかった。持続可能でない農業の仕方、そして品質の低さも問題だった。サブリナは長い海外での生活に終止符をうち、インドネシアに帰国した。

 そして、KRAKAKOAを2013年に設立。100%インドネシアのカカオ豆で作る、ハイクオリティ製品の生産販売を目指すことになる。ブランド名「KRAKAKOA」は、1883年に大噴火したインドネシアの有名な火山・クラカタウ(Krakatoa)火山から取った。Krakatoa + Cocoaの造語だ。サブリナのKRAKAKOAが将来、社会に大きなインパクトを与える会社にしたいという思いが込められている。

krakakoa

創業4年で世界的賞を受賞

 KRAKAKOAは、環境保護団体WWFと協働し、カカオの一大生産地であるランプンで農家への教育と彼らのカカオ豆をマーケットの3倍の価格で購入するオフテイク契約をすることからスタートした。高額で彼らのカカオ豆を購入することで、農家は生産性を上げれば収入を増やすことができるようになった。同時に、農家に持続可能な農業方法へのコミットメントに署名をさせることで、有機栽培、違法な森林伐採や狩猟活動をさせない継続可能な環境作りにも取り組んだ。現在までに、トレーニン

グに参加した農家の数は2000に上る。

 食べるとわかるが、KRAKAKOAのチョコレートは品質が高い。2017年には世界で最も権威あるUKのチョコレートコンペティションAcademy of Chocolate (AOC)で受賞もしている。かつてインドネシアのカカオ豆はほぼ輸出用で、インドネシア人が食べるチョコレートは海外で加工され逆輸入されたものだった。インドネシアでこのレベルのチョコレートが食べられるようになるには相当の努力が必要だ。

  一番難しかったことは、サブリナたちが提案する方法が良いカカオ豆の生産につながることを農家に信じてもらうことだったという。カカオの成長には4年、通常の生産性になるまでには15年かかる。サブリナの辛抱強い説明とパッションがなければ達成できなかっただろう。AOCの受賞は、農家と実践しているモデルによってインドネシアのチョコレートがグローバルの舞台でトップになれるとサブリナたちが実感できた瞬間だった。現在、KRAKAKOAは日本、シンガポール、ニュージーランド、EU、UKにも輸出している。

 KRAKAKOAのチョコレートには、インドネシアらしさにこだわったチリ味などもある。パッケージもすべてハンドメイドで、それがランプンの女性たちの雇用にもつながっている。カカオも今ではスラウェシ、バリ、ヌサトゥンガラにも調達先を広げた。アチェやカリマンタンのカカオを使用したこともある。サブリナはもっと多くの農家に教育のチャンスを与え、持続可能な、そして公平な調達の大切さをもっと社会に広く知ってもらいたいと言う。  

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汗をかく仕事を選んだ創業者を支援

 KRAKAKOAを応援する理由は、おそらくもっと楽に良い場所でグローバルに活躍できるであろうサブリナが、インドネシアを選び、汗をかいて仕事をすることを選んでいることだ。サブリナには2016年に出会って、それ以来KRAKAKOAのエンジェル投資家の一人になった。長く変わることのなかったインドネシアのカカオ豆農家の状況を変えたいという彼女の熱意と夢、さまざまなブランドや職人たちとのコラボレーションを生み出していく彼女のスキルは称賛に値する。これからのKRAKAKOAの更なる成長を楽しみにしている。 

 KRAKAKOAのウェブサイトには日本語もある。質や手仕事、職人の作るパッケージにまでディテールにこだわるサブリナは、日本人の反応を見るのが好きだという。地球に愛と喜びを与えられる日本人の職人たちとのコラボレーションにも興味があるそうだ。 KRAKAKOA Web : https://www.krakakoa.id/

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